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2012年7月 7日 (土)

もの言えぬ組織の末路~JR尼崎事故・歴代3社長裁判が裁くもの~

先日来、このブログで、
現場の声に耳を傾けることがいかに大切かを述べてきました。
現場の声が届かない!~滅びる組織とは~

この点について、注目すべき裁判
~JR尼崎事故についての井出氏ら歴代3社長の刑事責任を問う裁判~
が、昨日(7月6日)神戸地方裁判所において開始されました。
~正確には、起訴自体はずいぶん以前になされ、
公判前整理手続が続けられてきました。
昨日は、ご遺族やマスコミ達傍聴人が傍聴できる形での、
第1回公判が行われたのです。

刑事裁判の第1回公判においては、
検察官、弁護人双方が、冒頭陳述という形で、双方の主張立証方針(防御方針)を示します。
この裁判は、検察審査会経由の強制起訴事件ですので、
プロの検察官はおらず、検察官役も、弁護士が「指定弁護士」という名前で行います。
わかりにくいですね・・・。
報道記事を読まれるときは、
「指定弁護士」=検察官(被告人の刑事責任を追及する立場)
と読み替えてみて下さい。

この事故について、訴追機関である検察庁が唯一起訴した山崎氏については、
先日、無罪判決が確定しています。山崎氏無罪確定へ(MSN産経)
ブログの題名を「第2陣」としたのは、その意味です。

昨日の第1回公判において検察官役の指定弁護士により行われた
冒頭陳述(主張立証方針)の内容が公開されました(7日の新聞各紙が報じています)。

冒頭陳述は多岐に渡る内容ですが、
中でも私が注目したいのは、
JR西の企業体質
⇒トップダウンの企業風土を被告人らが確立・承継した。
⇒収益を上げることに積極的で、安全対策への投資にはしぶかった。
⇒現場からの進言は到底期待できなかった。
・・・とする主張です。

この主張は、極めて重要です。

医療・福祉の世界では、事故になりそうだった、危なかった、というケースを
「ヒヤリハット」と呼び、ヒヤリハット事例研修などを盛んに行っておられます。
JR西では、
「あのカーブは曲がるときにヒヤッとした」
そういう現場の声は、なかったのでしょうか。
そういう声を上げさせない仕組みを作ってしまった責任は・・・。

上記の主張について、JR西3社長裁判についての多くの報道が、
「金儲け優先で安全をおろそかに」と整理しています。
整理として間違いではないでしょう。
しかし、収益を上げることが企業経営の命題である以上
噛み合わない議論になってしまう恐れがあると感じます。

より多くの人間、我々みなが教訓とすべきことは、
部下に、現場に声を上げさせない仕組みを作ってしまった。
現場から、部下から声が上がらなかった結果、
未曾有の惨事を招いてしまった。完全に失敗してしまった。
そのことが裁かれている。この点だろうと思うのです。

唯一の訴追機関として君臨してきた検察庁が起訴した
山崎被告人が無罪となった以上、
それ以前の社長達を有罪とすることは難しい。
このような考えが、一般的なものだろうと思います。
しかし、井出氏らが、本当にJR西日本を
「もの言えぬ組織」「現場から声をあげられない組織」としたのであれば、
例えば、現場のヒヤリハット事例に聞く耳を持たず、
事故のリスクをかえりみなかったのであれば、
そういう事実が、証拠とともに明らかになれば、
結論も変わってくるのではないでしょうか。

なお、検察審査会の議決に基づく強起訴制度のもとで、
指定弁護士が、裁判の対象をどのように設定で来るのかについては、
困難な議論があります。この点については、また、別の機会に触れたいと思います。

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