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2012年8月26日 (日)

「消費者」vs「事業者」対置論への疑問~消費者契約法制定時の反対意見と規制緩和論~

私は、消費者と事業者とを対置し2分する議論は問題が多いと思います。
消費者と比較して、あまりに中小零細事業者の保護に欠ける面があるからです。
このことは、以前にブログで述べさせて頂いた通りです。
「消費者」の対義語は・・・

「消費者」「事業者」というマジックワード


では、何故、消費者契約法の制定時においては、
このような立法形式が選択されたのでしょうか。
疑問に思い調べていて、立法時の審議記録中に、
以下のような記述を見つけることが出来ました。

「事業者と消費者の間には構造的に情報量や交渉力の格差が存在する」とするのは一方的過ぎる。
全国の事業者の圧倒的多数は中小事業者であり、小売・飲食・サービス業で4名以下の事業所数は
300万にもなる。これらの事業者は、むしろ非常に弱いのであり、消費者の方が圧倒的に強い場合もある。

cf.国民生活審議会議事要旨
消費者庁のウェブに今も掲載されている
第17次国民生活審議会消費者契約法検討委員会
消費者契約法検討委員会第9回(平成11年10月29日)議事要旨中の記載です。
どの委員のご発言か、この議事要旨からは不明ですが、
やはり、立法検討段階から、単純2分論の問題点に気付き、
批判する声はあったのですね。

ではなぜ押し切られてしまったのか。
中小零細事業者を積み残すという弊害、
その弊害を超えるメリットがあると判断されたのか。
これから、少しずつ、探求してみたいと思います。

因みに、上記議事録を読むと良く分かるのですが、
消費者契約法は、「規制緩和論」の怒濤のような潮流の中で
生み出された法律だということに留意すべきかも知れません。
「事前規制から事後調整へ。」「裁判によらなくても良い国民にわかりやすいルール。」
「国民にわかいやすい」という美名の下で、
極端かつ不適切な(消費者vs事業者)二分法が採用されてしまったのではないか?
そのような推測も成り立つのではないでしょうか。

なお、上に紹介しました議事要旨意見の議事録部分(詳しいもの)を以下に掲載しておきます。
この意見を述べた委員は、どのような気持ちだったのでしょうか。
議論には、多数決には負けるが、後世のために、是非少数意見があることを明記して欲しい。
そういう気持ちで述べておられるようにも読めます。
目の前の議論の勝ち負けを超え、歴史を見据えた、大変立派な態度と思います。
○ 委員
 基本的考え方の「(2)立法のスタンス」というところでございますが、前にも発言させていただいておりますが、ここには「事業者と消費者の間の構造的な情報力格差や交渉力」と一方的に決めつけられておりますが、今のご発言の中にもございましたが、前にも申し上げましたように、全国の事業者の圧倒的多数は中小企業者です。皆さん、どこまで現実をご理解いただいているかわかりませんので数字をもって申し上げますと、例えば我々が日常の買い物をする小売業、飲食業、あるいはサービス業で、従業員4人以下の本当に小規模零細でやっておられる事業所が300万以上ございます。中小企業の中でも非常に小さいところがかなりの部分を占めているわけです。
 今回の法律があらゆる消費者契約を対象にする、しかも時間のかかる、お金のかかる裁判に持ち込まないで、現場で迅速に処理ができるような一般的なルールを作ろうということでございますので、本来、私どもの立場から申し上げれば、こういった有店舗で小規模零細でやっている方なんかは、ほとんどトラブルなくやっているわけですから、本来は除外してほしいと言いたいところでございますが、そこは、せっかくこういう議論をされて国民的ニーズもあろうというので、我々としてはできる限り明確にやっていただきたい、ルールとしてはっきりしたものに限定すべきだと申し上げているわけです。
 その根底にありますのが、まさに情報量、あるいは交渉力の格差というのは間違っている、格差があるというのは一方的すぎる。1人や2人、あるいは4人以下の小規模事業者は、むしろ消費者に対して非常に弱い立場なのです。皆さんも日常の行動をお考えになればと思うのですが、小さな商店に行けばどっちが強いか、消費者の方が圧倒的に強い場合もたくさんあるわけです。すべてとは申しませんが。
 したがって、基本となるスタンスをこうやって決めつけられるのはおかしいのではないか。もう一つの見方もあり得るというのは是非書いていただきたいと思います。

国民生活審議会議事録
_________________________________

この委員の意見には、まさに、今、私が言いたいこと、
中小零細事業者の保護が忘れ去られてはならないということが、
切々と述べられています。
人と人との間に、情報力・交渉力の格差が類型的にある場合とは、どのような場合なのでしょうか。
一方を「消費者」として保護すべきと規定するとき、・・・このこと自体は素晴らしいことと思います。
「消費者」に対置するものとして、何故、「事業者」を置かなければならなかったのか。
・・・私は、この対置論は今や克服されるべきと思います。

______________________________
以上のブログを発表させて頂いた後、
国会衆議院商工委員会8号(平成12年4月5日)の議事録を読む機会を得ました。
(今でもWebで読むことができます)

上記委員らしき方の参考人としての意見を発見しました。
全国商工会連合会の井田理事のご発言だったようです。
○井田参考人 全国商工会連合会専務理事の井田でございます。諸先生方におかれましては、日ごろから、商工業、とりわけ中小企業の振興発展に関しまして御支援、御指導いただいておりまして、まことにありがとうございます。厚く御礼申し上げます。また、本日はこのような発言の機会を賜りまして、ありがとうございます。
 お手元に二枚紙で骨子をお配りいたしておりますけれども、骨子に沿いまして簡単に意見を申し上げたいと思います。
 私ども商工会は、全国で二千八百余の、主として町村部に設置されております地域の総合経済団体でございますけれども、地域の商工業の振興発展のために、中小企業者に対する経営指導等さまざまな活動を行っております。現在、会員は約百十万事業者ございますけれども、その大部分がいわゆる小規模な事業者でございます。
 さて、私は、昨年の五月に国民生活審議会に設置されました消費者契約法検討委員会の委員といたしまして法案の検討作業に参画をさせていただきましたけれども、基本的な立場といたしまして、主として次の三つの点につきまして委員会の場で主張させていただいたわけでございます。
 第一点は、法案をつくる以上、実際の取引現場の実態に即応した法制度にしていただきたいということでございます。
 この消費者契約法は、消費者契約、すなわち、事業者が消費者との間で締結いたします契約のすべてが対象になる法律でございます。法律の適用対象となります事業所数で申し上げますと、恐らく全国で約四百五十万事業者に上ると推計されるところでございまして、そのうちの大半、九五%程度は中小企業でございますので、この法律の制定につきましては、法案の内容いかんでは、中小企業、とりわけ小規模な事業者の事業活動に大きな影響を与えかねないわけでございます。
 したがいまして、中小企業の経営実態あるいは取引現場の実態を十分踏まえた上で、この法律の与える影響というものも十分考慮した議論をぜひ展開していただきたいということを、まず第一点で申し上げたわけでございます。
 二つ目といたしまして、この法律は、でき上がりますと、いわゆる裁判における紛争処理規範になるのはもちろんでございますけれども、裁判外における紛争処理においても当然活用されるということになりますので、予見可能性の高いルールでなければならないという点でございます。すなわち、具体的に事業者がどういう行為をすればどういった法律効果が発生するのか、こういったことが事前に明確にわかるルールにしてほしい、すべきであるという点でございます。
 第三点でございますが、この法律がいわゆる包括的な民事ルールということになる以上は、その規定内容といたしましては必要最低限のものに限るべきであるという点でございます。すなわち、極めて特殊な取引形態、あるいは極めて特定の商品分野、こういった分野に係るトラブル処理に関しましては、消費者契約法のようないわゆる一般的なルールではなくて、むしろ別途の個別法といったもので対応すべきではないかという点でございます。
 御承知のとおり、国民生活審議会消費者契約法検討委員会の中には、一般有識者を初めとしまして、各消費者団体からの方々、また私どものように業界団体の委員、法律学者、弁護士さんなど、非常に幅広い関係者が参加をいたしておりまして、消費者サイドあるいは事業者サイドから、実際のトラブルの実態あるいは取引の実態を踏まえまして数多くの意見が出されまして、相当な長時間を費やして議論をされた結果として報告書に取りまとめられたものでございます。
 私も、中小企業の立場から数々の意見を申し上げましたけれども、最終報告書に決してすべてが盛り込まれたわけではございませんけれども、長時間の議論を通じまして全体の審議が深まっていく中で、ぎりぎりやむを得ないということで最終の報告書の取りまとめに御協力、御賛同を申し上げたものでございます。したがいまして、この検討委員会の報告書に盛り込まれております内容は非常に重たいものというふうに受けとめております。
(以下略)
____________________________

国会まで来ると、何か、諦めた大人しい意見になってしまっていますね。
商工会として、国策に逆らい、国と喧嘩する訳には行かないのですから、当然といえば当然でしょうか。
しかも、消費者事業者2分論の中での議論に終始してしまっておられる点、残念です。
審議会げ激論を交わそうとしても、枠組みを変えることができなかった・・・。その敗北感でしょうか。

しかし、中小零細事業者が被害者になっていることも多いという視点を、
もっと強く抱いて頂いていれば・・・という気持ちを、(今となっては)抱きます。

____________________________

因みに、迷いなき賛成意見を述べておられる(当時)東京大学の落合誠一教授の意見です(商法・会社法)。
規制緩和論~市場原理の貫徹~を背景に、とにもかくにも(乱暴であっても)「明確」なルールを求めて制定された法律であることが、容易に読み取れるように思います。
○落合参考人 東京大学の落合です。
 本日は、与えられました時間が十五分ということですので、大きく分けまして三つのことを簡潔に申し上げたいと思います。第一は、なぜ消費者契約法が必要なのかという点であります。第二は、消費者契約法の民事ルールは包括的で極力明確なものでなければならない、こういうことであります。第三は、消費者契約法は消費者と事業者の利害の妥当な調整を実現するものでなければならないということであります。順次これにつきまして述べさせていただきます。
 私は、消費者契約法というのはぜひとも必要であり、今国会での成立を強く望んでおりますが、なぜ消費者契約法が必要なのかということにつきまして、基本的には二点あるように思っております。
 第一点は、市場メカニズムを重視する経済社会システムに転換するための環境整備の一環としての必要性であります。
 つまり、二十一世紀に日本が繁栄を続けるというためには、市場メカニズムを十分に機能させる経済社会システムが絶対に必要なわけでありますが、このことは、ほっておけば自然に実現するというわけではありません。そのためには、規制緩和を大胆に進める等の環境整備が積極的になされねばならないわけであります。
 ところで、その市場メカニズムというものが十分機能するためには、市場参加者の自由というものが確保されなければなりません。そのためには、行政がこれまでのように民間の活動に広範囲に介入するということをやめる必要があり、したがって大胆な規制緩和が必要になってまいります。また、市場での取引が適切になされるには、市場参加者が十分な情報を持って、お互いに自由で対等な交渉を行えるということが必要であります。
 ところが、消費者と事業者とを比較いたしますと、情報の点でも交渉力の点でも、一般的にいいまして消費者は事業者よりも十分ではありません。つまり、このままほっておけば、消費者と事業者の契約取引は適切なものとならない場合が多いのであります。換言すれば、消費者と事業者との契約取引においては市場メカニズムが十分機能するための条件というのが一般的には満たされていないということになります。もっとも、従来は行政が事業者の活動に広範囲に介入するということによりまして、消費者と事業者との間にある格差を縮小させてきたという面がございます。
 しかし、今後、その行政の広範囲な介入というものを排除するということになりますと、それにかわる手段を積極的に用意する必要があるわけであります。そして、その有力な手段の一つが消費者契約法であるというふうに考えております。これが、消費者契約法が必要であることの第一点であります。
 その第二点としては、現在、我が国においては、消費者の苦情の八割が契約関連であるというまことに深刻な状況が存在しておりまして、早急に効果的な対応が求められていることであります。
 早急の効果的な対応としては、これまでのような行政の積極的な介入による対応は好ましくないということになりますと、消費者と事業者との契約関係を直接規律する民事ルールの充実強化が当然浮かび上がってまいります。しかも、消費者契約に特化した民事ルールというものは今まで我が国になかったということが、消費者の契約関連苦情が深刻化する有力な原因の一つとなっていることも考え合わせますと、消費者契約に特化した民事ルールとしての消費者契約法を早急に立法して、現在の深刻な状況に対処する必要があると判断されます。
 以上のような消費者契約法の必要性の認識につきましては、政府案も民主党案も私と基本的に同様な認識に立っているというふうに判断されまして、その点におきまして大変心強く思っているところであります。
 申し上げたい第二としましては、あるべき消費者契約法の内容でありますが、一般的に言いまして、包括的で、極力明確な民事ルールである必要があるというふうに考えております。これにつきまして申し上げます。
 まず、包括的ルールでなければならないということですが、これまでの我が国の消費者保護は、民事ルールによるのではなくて、個別の業法による対応というのが中心でありました。しかし、個別の業法による対応は、業法が対象とする事業者に規制が限定され、対象外の事業者による消費者被害については無力であり、どうしても規制にすき間が生じ、また新たに事業者を規制の対象に追加するとしても、後追い的になるという問題がございました。
 それでは、すべての事業者のすべての活動を対象とする包括的な業法をつくるということになりますと、これはもちろん、行政の介入を必要最小限度とする規制緩和の基本的方針に反するということになります。そこで、すき間を埋め、後追いを避けるということになりますと、包括的な民事ルールというものが考えられるわけであります。民事ルールであれば、基本的に裁判による事後規制ということになりますので、規制緩和の方針に適合し、問題はないと考えられるわけであります。
 したがって、消費者契約法は、すべての事業者を対象とする包括的な民事ルールとする必要があります。そして、消費者契約法は、消費者取引市場参加者のすべてに適用がある、いわば消費者取引市場の土俵を構成する基本的ルールということになりますから、消費者取引市場というものを十分に機能させるための重要な環境整備の手段となるのであります。この点につきましては、政府案も民主党案も包括的なルールということになっており、まことに適切であるというふうに考えております。
 次に、消費者契約法の民事ルールは極力明確でなければならないということであります。
 既に申し上げましたように、消費者契約のみを対象とする民事ルールというのは、現在我が国にはありません。したがって、基本的には、対等当事者間の関係を規律する民事ルールである民法、商人を対象とする法律関係を規律する民事ルールである商法、この民法、商法というものを使って消費者契約の問題に対処しているわけであります。本来、消費者を対象としていない民法、商法のルールを消費者取引に使うのは、使用目的が異なるルールを無理に当てはめるという面があり、それ自体かなり問題があるわけであります。
 また、それに加えまして、民法、商法には、不当契約条項に関する規制がほとんどありません。したがって、権利乱用とか信義則といった漠然とした一般条項を用いて問題を解決せざるを得ないわけで、ルールの適用の結果が甚だ不明確な状況にあります。これは結局、裁判をやってみないと結論がわからない、ある条項が無効になるかどうかわからないというようなことがあり、結果の予見可能性が極めて低いルールしか現在ない、そういう重大な欠陥がございます。そして、予見可能性の低いルールしかないという状況が消費者契約紛争を深刻化させている有力な原因の一つと考えられるのであります。
 したがって、予測可能性の高い明確なルールがまさに消費者契約法には必要になるのであります。もちろん、消費者契約法のルールは、例えば町の八百屋さんからデパートまですべての事業者に適用がある包括的ルールでありますから、すべての場合に適用があるということを考えなきゃいけないということから、明確性を要求するといいましても、数学の公式のような明確性というものは当然求めることはできないわけでありまして、一定の解釈が必要とされるというのはやむを得ないことであります。したがって、私としては、明確性が必要だと言っているわけですが、この明確性の意味は、もう少し正確に申し上げますと、極力明確なものでなければならないというふうに申し上げているのであります。
 この極力明確でなければならないという点につきましては、政府案も民主党案もこの要請はクリアしているというふうに思われますが、ただ、民主党案につきましては、重要事項等について内閣総理大臣が指針を定める、これは三条四項、それからまた、不当条項の具体的基準を政令で定める、九条三項という規定がございまして、そういたしますと、具体的な指針ないし政令が明らかにならないと、最終的なルールの形がどうなるのかが現時点では必ずしもはっきりしていないような気がいたします。
 最後に申し上げたい第三でありますが、それは、消費者契約法は消費者と事業者の利害の妥当な調整を実現するものでなければならないということであります。言うまでもなく、世の中には消費者と事業者がともに存在をしているのでありまして、その一方が欠けた社会というのは考えられません。したがって、どちらか一方の利益にのみ偏するルールというのは妥当とは言えないのであります。
 第十七次の国民生活審議会消費者政策部会における検討は、消費者と事業者との妥当な利害調整としてのコンセンサス形成を目標といたしました。そして、昨年十二月の部会報告によって、消費者も事業者も、それぞれ一〇〇%の要求という点から見ますともちろん不満があるといたしましても、お互いに譲歩して、この線ならば全体として受け入れ可能という包括的なパッケージとしてのコンセンサスをまとめることができたというふうに考えております。
 私の見ますところ、政府案は、基本的にこの消費者と事業者の受け入れ可能な包括的パッケージとしてのコンセンサスを忠実に反映しているというふうに評価しております。したがいまして、それぞれ不満はあるにいたしましても、政府案であれば消費者も事業者もほとんど問題なく受け入れ可能であるというふうに考えております。
 許された時間が短い上に、やや早口でおわかりにくかったかもしれませんが、以上で私の意見を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)

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